所長挨拶

所長挨拶 

 2023年度は、運営開始からの10年に続く次の10年に、あいちシンクロトロン光センター(あいちSR)の高度化をどう実現していくかの立案と予算確保の年度になりました。2022年度にユーザーの皆さんも参加頂いて設置した将来計画検討委員会の提言を元に、愛知県のご支援も仰いで実際の予算計画を立てました。計画の柱は高速化・効率化とイメージングの高度化、並びに更新時期を迎えた機器の計画的対応です。最初の3年間(2024-2026年度)にまず硬X線のXAFS機能の強化とイメージング機能強化を目標に、BL8S1とBL8S2を改修し、高度化することにしました。現在あいちSRではBL5S1とBL11S2を用いたXAFS測定への申請が利用可能時間を50%も越える状況が続いており、ユーザーの皆さんからもう少し何とかならないかと言うお声に対応するものです。イメージングでも単色CTでは光量が不足するのに対応して、多層膜分光器を設計し、広いバンドで早いCTを実現しようと考え、設計を進めました。加えて蛍光X線撮像による1 µm分解能を目指した開発にも着手します。

 

 これらの高度化と共に10年を越えた機器、装置の劣化が始まり、老朽化した機器の更新を系統的に進める必要があります。一部は既に組織的な更新も進めています(実験ホール天井の照明が製造中止を迎える水銀燈からLEDに替わり、電気代を大きく節約しながらもかなり明るくなりました)が、基幹部、冷却システム、空調機器など高額なシステムにはなかなか手がつけられておらず、優先度を見極めながら対応して行こうと考えています。

 

 一方で、感染症が収束に向かうと同時に円安が大幅に進み、エネルギー価格、特に支出のかなりの部分を占める電気代が大幅に高騰し、運営を圧迫しました。センター内での省エネルギーと経費削減の努力もし、県からのご支援も頂きながら、上記高度化、老朽化対策を実施するには利用料の値上げをお願いしなければならない状況に至っています。幸い、2023年度最後の運営委員会で23%の値上げをお認め頂くことができ、状況をご理解頂いた皆様に感謝申し上げます。今後も「誰でも使える放射光」を合言葉に、地域を中心とした産業と学術の先端研究開発を押し上げて行けるよう努力して行きたいと考えています。

 

 

 

2025年2月

あいちシンクロトロン光センター

所長  國枝 秀世